バーチャル往診随行:子牛が調子を崩した編 |
ある日の朝『子牛が調子を崩してるので診てください』と往診依頼が入りました。到着までに診るべき点や治療法を練りながら向かいたいので、もう少し稟告を取りました。『昨日の夜は配合も食べたけど、今朝は食べず、ふらついている。急に痩せてきてしまったようだ』とのこと。皆さんならどんな病態や病名を思い浮かべますか?さぁ、往診に向かいましょう。

4ヶ月齢のホルスタイン種雌牛。尾と臀部に汚れがあるので下痢をしていた様子で、確認すると、ちょっと便が赤っぽかったとの事。徐脈。そしてこの起立姿勢(壁に向かって起立)で確認すべき事があります↓


目を見るとなんとも言えないギラついた視点の定まらない状態で、斜視、そして威嚇反射が消失しています。瞬膜が露出している様にも見え、破傷風も頭をよぎりましたが、外傷は無く、開口も可能で、脱水で眼球が陥没したため見え易くなっているのでしょう。この後一度歩いたのですが、壁伝いに一周回り、元の位置に戻りました。
歩様異常、盲目、斜視といった特徴的な症状から、何よりも大脳皮質壊死症を疑い治療します。下痢は大脳皮質壊死症の前駆症状として見られることもある様ですが、この月齢ならコクシジウムに原因があるかもしれません。また、下痢の経過が長ければカリウムが下がっているかもしれません(低カリウムのためふらつく、または起立不能になることもあります)。カリウムを経口投与、ジメトキシンを注射。個人的に好きなESE。そして今回の治療の要、デキサメサゾン、酢酸リンゲルにビタミンB1製剤を混ぜて点滴しました。

大脳皮質壊死症を疑う症例の場合、保定で頭部の向きを指定すると転倒したり、四肢をバタバタと苦しがります。今回はあらかじめ横臥にし、蹴られない様に四肢をロープで結んでから留置針を刺入しました。四肢を動かすため敷き藁が掻き分けられているのが写真からもお分かりいただけるかと思います。
診療所での血液検査は

初診時に教科書通りの投与量でビタミンB1製剤とデキサメサゾンを投与すると、大概は驚くほど回復します。しかし2診目以降に気付いて治療を開始しても、思うように治療に反応してくれません。初診時に症状を見逃さず、適切な治療を施して欲しいと願っていましたが、ようやく育成牛の典型的な写真が撮れました。この個体の後姿を是非覚えていて欲しいですし、これを機に『牛の臨床』大脳皮質壊死症のページを読んでみてください。
農家さん、診療立ち会いのご協力と写真投稿のご快諾、ありがとうございました!

(猿払村)
