バーチャル往診随行:子宮脱だ!パート3編 |
『初産の牛が分娩して子宮が全部出てしまっている』と電話がありました。到着までに牛を吊起する段取りをしておいてもらった方が円滑に整復できるので確認したところ『場所的に吊れない』とのこと。電話であれこれ確認するよりも、往診距離も近いですし現地で状況確認をした方が早いかと思い『急いで向かいます!』と電話を切りました。さあ、往診に向かいましょう。
『初産だし起立してくれるかもしれない』『どうか起立してくれますように』と願いながら車を走らせましたが、到着して確認すると横臥し、今にも死んでしまうかの様なギラギラとした目つきで苦悶しています。段取りをつけて何とか後駆を吊りあげても、そのタイミングで死亡してしまう心配もありました。茨(いばら)の道ではありますが、このまま整復することにしましょう。急いで尾椎硬膜外麻酔を施し、ビニールを持って来てもらい、綺麗に洗浄した子宮の下に敷きました。

バーチャル往診随行:子宮脱だ!パート2編でお話しした鮭袋がずれてしまう使いづらさの解決法として宗谷北部のM獣医師に『小さい穴が開いていれば良いんですよ』と教えてもらっていました。試しに写真の様に穴を開けて子宮を入れます。宮阜がひっかかって入れづらさがあるので『鮭袋を使わずに入れた方が早いのでは?』と自問する瞬間があるのですが、そこでめげてはいけません。子宮が全て鮭袋に入ったので先端から押し込むと…驚く程あっという間に還納しました。しかしまだ反転が全て綺麗に整復できたわけではなく、手を抜いたり牛が再度怒責すると容易に再脱出してしまう状態です。これ以上押し込もうにもこちらも這いつくばってるので力が入りません。すると『先生これ使って』と農家さんがバットを持って来てくれました。バットを挿入。『子宮が出てなかったらボブキャット(小型のスキッドステアローダー)で吊れる』との事ですから起立させてから子宮の反転が全くない状態まで整復しましょう。この“反転を治す道具”として”バット、一升瓶、子宮脱整復棒”があるのですが、私は今ひとつ上手く使いこなせません。起立してからバットを抜き、手で整復していきます。正常な個体の場合、起立位で分娩直後であればスムーズに腹腔下方へと手を挿入していけるはずです。しかし子宮脱の還納直後はたいてい左右どちらかに偏っていたり、よじれ、引き攣れがあります。腕と手の甲で偏りや引き攣れの反対方向に力をかけたり、背方に持ち上げてそれより先の子宮を重力で下方に落とす様なイメージで子宮の粘膜面を触っていると、大抵スムーズに腹腔下方へと手を挿入していける様になります。ビューナー縫合をしオキシトシン投与。両後肢が不安定なので滑走防止のバンドを装着してもらい、後駆が高くなる様に敷き藁を多量に敷いてもらい、抗生物質も投与しました。

牛が起立不能で吊起できない場合、整復出来たとしても、かなりの時間がかかってしまうのが常です。今回は鮭袋を使用する事で短時間で整復出来ました。まさか起立不能時にもこんなに活躍してくれるとは!新たな発見でした。
搾乳前の忙しい時間帯にも関わらず農家さん3人がかりで対応してくださいました。私のリクエストに次々と応えてくださりとても心強かったです。ありがとうございます!
数日後別件で往診した時には『ほら、これが先生が助けてくれた牛。乳も順調に搾れてる』と話してくれました。肋も張り(ルーメンに内容が沢山入って腹腔容積が大きい様子)調子が良さそうです。なんて嬉しい事を言ってくれるんだろうと心で泣き、これからも期待に応えられるよう身の引き締まる思いです。

6年生の実習募集中です!宗谷でお会いしましょう!!
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